数多くのリモコンを1台にまとめられる魔法のガジェット、それが学習リモコンだ。私はこれまでクロッサム2+、RM-VL1000U、RM-A1500と使ってきたが(←結局、所有リモコンの数は増えている……)、ここしばらくリモスタイル(ARS-3000)という液晶タッチパネルタイプのリモコンにハマっている。 液晶タッチパネルタイプの製品は、これまでにもビクターのRM-A2500や、ソニーのRM-AV3000U、マランツのRC9200などが発売されているが、どれもけっこうなお値段がする上、サイズも大きい。一方、ARS-3000は1万円台と比較的低価格でありながら、十分な機能と扱いやすいサイズを両立しているように思えたので、さっそく購入してみた(使用レポートは、こちら)。 使ってみて感じたのは、操作性や機能のバランスが実によいということ。信号を学習する手順やキー配置など、細かな使い勝手もよく考えられている。作り手は、相当のガジェット好きと見た! これを作ったアルテアインクという会社に対する興味が沸々と湧いてくる。そこで、同社にコンタクトを取り、開発経緯などを聞かせていただけないかお願いしたところ、快く応じていただけた。
**○理想の学習リモコンを目指して会社を興す** 社長のB氏は、以前はMac用の某周辺機器メーカーで企画開発を担当していたのだという。手がけた製品を見せていただいたところ、そのうちいくつかを私も所有していた。どれもデザインや使い勝手に独特のこだわりがある製品群で、なるほどと納得。 「元々モノをつくるのがすごく好きだったんです。プラモデルに熱中したり、絵を描くのが好きな少年でした。」 さて、B氏は在社中、中国や台湾、香港などの製造現場を頻繁に行き来していたのだが、2001年に香港のショップである学習リモコンを見つけた。現地店頭価格は日本円換算で約2万円と安くはなかったが、液晶タッチパネルのみという潔さに魅せられた。キーのカスタマイズも自由度が高い。以前から各社の学習リモコンを試していたB氏は、この製品の出来のよさにピンと来た。これなら日本でも売れるのではないか? 説明書は英語だし、数字キーも1?10までしかないが、マニュアルを日本語化して設定を変えれば問題ないだろう。 ところが、社内ではなかなか学習リモコンのよさをわかってもらえない。いずれは独立しようと考えていたB氏は、それならば自分で理想の学習リモコンを作って、勝負しようと心を決める。幸いなことに、勤務先の社長も独立を応援してくれるという。 「その会社の社長にはすごく感謝しています。周りに聞いても、こんなにきれいに辞められた人はあまりいないですね。今でも連絡を取り合い、いっしょに食事していますよ。」 会社を辞めたB氏は、会社時代の貯金を元手として、2003年7月にアルテアインクを設立。会社員時代に自分で作った人脈をたどり、台湾のリモコン専門メーカーに共同開発を持ちかけた。○機能とコストのバランス 理想の学習リモコンを目指すといっても、何でもかんでも機能を盛り込めばよいものができるのではないし、価格との兼ね合いもある。当初は、フルドット液晶タイプ(細かなドットの集合で絵や文字を表示する。パソコンの表示と同じ)にすることも考えたが、そうすると液晶デバイスの価格が跳ね上がり、消費電力も増える。当然、充電器が必要になり、それも別途開発しなければならない。こうした高価格の製品は、一部のハイエンドユーザーにしか受けないものになってしまうだろう。そこで、液晶はセグメント表示タイプに決めた。 筐体のデザインでも苦労があった。台湾メーカーとアルテアインクで金型はシェアし、前者が欧米で、アルテアインクが日本で販売する。そのため、メーカー側の作りやすさや製造コストとのバランスも取らねばならない。液晶サイズも、B氏としてはもう少し縦に長く横に細くしたかったのだが、海外で売り出す場合のコストや欧米人の手の大きさを考えて現在のサイズで行くことにした。
○130種類のリモコンを元にボタン配置を決定 開発で特に苦労したのは、ユーザーインターフェイス部分だという。 「一番悩んだのはキーのレイアウトとデザインです。1つのキーには、3?5個の表示を割り当てるわけですが、それをどう配置すれば使いやすいか。」 そのために、国内のビデオデッキやテレビ、ハードディスクビデオレコーダーなど全部で約130種類のリモコンを写真に撮り、どのキーが必要でどれが不要か検討を重ねた。 ユニークな特長として、リモスタイルのキーには十字キーが2組用意されている。これのおかげで、テンキー+十字キー、再生キー+十字キーというように、機能を組み合わせやすいのだ。 「十字キーを2組というのは僕のアイデアです。台湾メーカーの販売する海外版では1組なんですよ。海外ではテンキーで操作することが多いので、日本のような数多くの種類のキーも必要ありませんし。日本版は、海外版に比べてフラッシュメモリーの容量も増やしてあります。」 リモスタイルには、国内外200社分のプリセット信号が記憶されている。 「正直いうとプリセットはあまり意味がないのではないかとも思いますが、バイヤーの方は何社分を入っているか気にしますからね。そこで、台湾メーカーの持っているデータと合わせて200社を収録しました。また、どうすればリモコンの信号を簡単に学習させていけるかを考えました。」 リモスタイルの学習モードでは、学習先のキーが順々に点滅するので、学習したいリモコンのキーをどんどん押していけばよいようになっている。 また、驚かされるのは信号の学習性のよさだ。例えば、多くのAV用リモコンでは、キーを一瞬押した時と長押し時で出す信号が異なる(ボリューム調整など)。こういった場合でも、リモスタイルの学習に問題はなかった。 「製造元のエンジニアがいつも自慢してますよ。うちの学習機能はどこにも負けないって。いいパートナーに巡り会えました。」
○手探りでも使える工夫 液晶タッチパネルタイプの学習リモコンで弱点となるのは手探りでの操作。リモスタイルは、この部分に関してもできるだけユーザーに負担をかけないように心掛けているという。 「一番使用頻度が高いのはテレビでしょうから、日本版では左下に配置して押しやすくしました。電源ボタンは右上なので、慣れてくればある程度は手探りでも使えると思います。右下のAUXには、照明のスイッチやマクロを登録しておくと便利ですよ。」 確かに数日使うと、画面を見なくとも意外と使える。それでも時々は画面を見ないといけないが。 「決定ボタンやボリューム調整部分に突起を付けたフィルムシートがあると便利かもしれませんね。」 それ、ぜひ発売していただきたい!
○A&Vフェスタでの大きな反響 今年9月、横浜で開催されたA&Vフェスタ2004において、リモスタイルが初めて公開された。小さなブースであったにもかかわらず、注目度は高く、他社ブースの関係者の多くも訪れた。 「ある大手メーカーで学習リモコンを開発されている方と、30分ほど立ち話しました。開発者にしかわからない話を共有できて、その方に褒められたのは本当にうれしかったですね。」
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